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花尊し

花尊し

自閉症の治療法

TEACCH



Treatment and Education of Autistic and
related Communication handicapped CHildren

(自閉症及び近縁のコミュニケーション障害の子どものための治療と教育)



ノースカロライナ大学のショプラー教授が研究・開発し、実践している。

(厳密にはこれのみがTEACCH)



<基本理念>




  1. プログラムの最終的目標は自立である。

  2. 自閉症の人達の特性を文化ととらえ共に生きる。

  3. 共同治療者としての立場・意見を尊重し、連携する。

  4. 個別教育計画(プログラム)を作成し、
    生涯にわたって継続する一貫した総合的・包括的な援助を行う。

  5. 自閉症の人達の特性や機能に合せて環境の方を変更(構造化)し、
    構造化された教育を行なう。

  6. 表に現われる問題行動よりも、
    根に有る認知障害を考慮した療育を行なう。

  7. 自閉症の療育者は、
    特定の専門分野(医学、心理学、教育、社会福祉、行動療法、言語療法、作業療法 etc)に偏らず、
    ジェネラリストとして詳しい知識を持ち、
    自閉症の人達をとりまくすべての問題を理解し、
    多領域の役割(行動管理、コミュニケーションスキル、社会生活上のスキル、
    余暇に関するスキル、職業訓練、自立訓練 etc)を果たせるスタッフであること。



<個別教育計画>



  • 正しい診断詳細な評価に基づき 一人一人の個人
    (低機能の人から高機能の人まで)に合った個別教育計画(プログラム)
    IEP(Individualized Education Program)を作成し、
    生涯にわたって継続する一貫した総合的・包括的な援助を行う。

    * 『個別』=『マンツーマン』ではない。



  • 自閉症の人一人一人別々に学習能力の綿密な評価に基づいて、
    障害ではなくて潜在能力の方を見極めて教育方針を立てる。



  • プログラムは実践され 改良され、子どもの成熟度と伸び具合に応じて改訂される。
    担当が変われば方針も変わる ということはないし、
    親が子の一生を考えなくてもすむよう、単なる通過集団の一員とはしない。



  • 評価は、


    1. その人が「合格」している課題領域や、
    2. 技能をまだ獲得していない課題領域、
    3. そして技能が芽生えつつある課題領域


    を明らかにし、
    これらの課題領域をその人のための教育プログラムに取り込む。



    * 技能間のばらつきは大きく、
    たとえ同じ人でも、
    ある技能領域と別の技能領域との間のばらつきが大きいため、
    この評価は多面的に行うことが必要である。



  • TEACCHで開発したフォーマルなチェックリスト等による評価に、
    インフォーマルな日常的な行動観察等の評価も組み合わされ、
    IEPに生かされ、実施される。





<構造化>




  • 周囲の人達が自閉症の人達に歩み寄り、
    自閉症の人達が その場面で何をすればよいのかを理解し 安心し 自立して行動出来るように
    環境を視覚的に分かりやすく整理、再構成、
    構造明確し、
    自閉症の人達の適応能力の不足を補完する。



  • 自閉症の人達は、
    かも知れない という予測を立てて行動することが難しく、
    これから起こる事も予測出来ず 不安で混乱するのであって、
    視覚優位の自閉症の人達が目に見える形(絵カードなど)で
    分かりやすく提示し
    今 何をどうするのか という予測が可能なようにする。




    1. いつ(When)---時間の構造化---予定表、時間割、スケジュール表
      (物や絵カード、写真、文字カードをレベルに応じて使う)


      • 始めと終わり
      • 何をどれだけやれば終わりか
      • 次にやるべきこと


    2. どこで(Where)---場所の構造化---場所と作業を1対1で固定し、
      何をするかがエリアで分かるようにする。


      • 目的別に部屋を分ける[ 食べる所、勉強する所 ]
      • 合理的な物の配置
      • 見ただけで分かる明解な表示
        (色別のカーペット、マット、床にテープで区画、ついたて、カーテン etc)


    3. 何を(What)---行動に対する構造化---予定表
      (物や絵カード、写真、文字カードをレベルに応じて使う)


      • 指示されて行動するということは
        相手のペース(待った無し)で動く訳で相当のストレスがある。
      • 何をするのか見通しがつき 自分のペースで動ける(集団行動ではない)ようになると楽になる。
      • (例) かごの中の課題(作業)をやると分かれば迷う事なし


    4. どのように(How)---方法の構造化---手順表

      • 指導

        1. 手を添える
        2. 指を指す
        3. 実物
        4. 写真
        5. 絵カード
        6. 文字カード
        7. 言葉

          • 言葉は 分かりやすい表現でシンプルに伝え、あいまいな言い方(抽象的表現)はしない。
          • そして、否定的な言葉は控える。
          • 日常使う言葉は統一する。例えば「お箸」と「箸」は違う意味を持っていると思ってしまう。



      • 手順の示し方は ルーチンを 左から右、上から下 など一定にする。
      • 一方的に押し付けず、子どもの好きなことや興味があることを探す。









  • 10人いたら10人分の違った構造化が必要

  • 環境の構造化で


    • かえって自閉症の固執性を強めてしまうのではないか
    • パターン化した生活から抜け出せないのでは
    • 普通の環境では適応出来なくなるのではないか


    との疑問も有るが、・・



    まず 環境の方を自閉症の人達にとって理解しやすいようにすることで、
    不必要な不安が取り除かれると、逆にこだわりが薄れ、
    自分の方から外界に働きかけようとする自発性が芽生え、
    融通性が出て来るようになる。
    パターン化した生活で安定出来る。



  • 子供が嫌がる事を無理強いするような構造化は無効である。



  • 部分的に構造化された環境が用意されているだけではTEACCHではないし、
    絵カードを取入れているだけでは TEACCHとは言えない。


<TEACCHと行動療法>




  • 行動療法では良くない negative 行動は無視し報酬を与えず、
    良い positive 行動には報酬を与える。


    しかし、行動を無視していいのは、
    その行動の意味をよく分析した結果でなければならない。
    行動の意味が分かればほとんどの問題行動は解決できる。

    TEACCHでは表に現われる問題行動よりも、
    根に有る認知障害を考慮した療育を行なう。



  • 表面化している問題行動のみの解決策を性急に求めるのではなく、
    理論(仮説)より実際の子どもの観察から自閉症を理解し、
    その人にとって そうせざるを得ない理由は何かということを、
    認知障害の面から追求することによって 援助の方向性が見えてくる。



  • 古典的な行動療法では
    問題行動に対して罰を与えるが、
    新しい行動療法では
    問題行動でも
    行動の無視や、
    5分以内のタイムアウト(不適切行動をしたらすぐ楽しくない状況に置く)、
    再指示、
    そして断固たる ダメ!
    によって対処されている。



  • TEACCHで教えるスキル(訓練して身につける技能)は 子どもが本当に理解できるスキルが選ばれ、
    スキルのレベルを上げるには長い時間がかかる。
    古典的な行動療法では現在の能力以上の課題を比較的早く学習させることが出来るが、
    別の環境で一般化することは困難が予想される。



  • 行動療法のテクニックはもっと包括的なTEACCHの教育プログラムの中に統合されている。



<TEACCHの実践>




  • [自閉症の理解]


    • 予期に反したら・・

      相手の言葉が全然 理解出来なかったら・・

      知らない人が全面に出て仕切られたら・・

      誰だってパニくるはず。



    • いつまで待てばよいという見通しがなく、
      ただ待たされるだけという事態に置かれれば、
      誰だって イライラするはず。



    • 「頑張れ!」 と彼らの側にのみ努力を求めたり、
      事情を語れない彼らに私たちの側の常識を押しつけてしまいがち。



    • 怒らない--でも 譲らない--が大切。
      見て覚えてしまうことが得意な子どもが多い。
      興味のあるものや得意なところは皆違う。




  • [構造化]

    • 自閉症の人が視覚的に気が散りやすい → ついたて

      自閉症の人が音で不安になる、
      聴覚過敏で気が散りやすい → ついたては無効、静かな環境を



    • 新しい試みをするときは、
      スケジュールの一こまを「?」にしておくと「?」のところでは、
      自分にとって不慣れで助けを必要とすることが起きるということが
      予め教えられていることになる
      (が、?=『その試み』で固定化される恐れ)



    • 話し言葉は消えて行くから一旦覚えなくてはならずエネルギーを必要とするが、
      絵カードなどで視覚情報が与えられればその情報はすぐには消えず、
      覚えなくても何度でも見て確認する事が出来る。



    • 空き缶つぶしはスティールが0円でアルミが30円で、
      弁別作業の絵も写真も駄目だったのに、
      アルミ、スチールとカタカナで書いたらスムーズに行った。
      彼の場合は リサイクルマークのカナ文字を画像化していたのだ。



    • 絵で通じる人もいれば、
      具体物でないと通じない人もいる。
      写真だとかえって細かいことに注目してしまい、
      伝わらなくなってしまうこともある。

      絵カードでもきれいに色が塗ってあったりすると、
      その色に反応してしまうこともある。





  • [観察]

    作業所で働いているある自閉症の人が、
    周期的に不調に陥ることについて、
    その要因を見つけようとよく観察したところ、
    作業で使う部材の製造メーカーが周期的に変わり、
    それにつれて不調に陥ることが判明した。
    メーカーが違えば彼にとっては全く別のものであり、
    何の予告もなく変更されるとパニックになるのだった。
    自分の気持ちを分かってもらえず、
    作業を中断したことを注意されるとますますイライラが募ったのであろう。



  • [適応]

    社会的スキルの獲得によって自身の自信となれば良し、
    納得出来ない社会的ルールを外側から強制されたら、
    機械的な反応しかできない、非常に緊張の高い、
    結局は非社会的な人になってしまう。



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